休み時間が終わり、ユキが教室に戻ってくると、トイラもキースもクラスのみんなに囲まれて、和気藹々としていた。

 あのトイラですら、面倒ながらも話の輪に参加しているように見えてしまう。

 横にミカもべっとりとくっついていた。

 ユキだけがそこに入れない。また逃げたくなるほどに怖くて自分の席に戻るのを躊躇った。

 ゆっくりと進み、みんなの輪に近づいたら何でもないことのように平常心を振る舞う。

 ユキが戻ってきても、そこに居た女子生徒は話しかけなかった。ミカですら――。

 ユキをこの輪から排除したいように思える。

「ユキ、オカエリ。ホウカゴ、カラオケ ダッテ。ユキ モ イコウ」

 キースが誘ったが、周りの女子たちはそれぞれ見合わせ歓迎してない。
 ユキは黙って首を横に振った。

 すぐさまトイラも同じように意思表示する。

「オレ モ イカナイ」

「ええ、トイラ行こうよ」

 ミカが強く誘う。

「トイラもキースも日本の文化を楽しんできて。たまにはクラスのみんなと遊んでおいでよ」

 精一杯笑うユキ。作り笑顔が虚しい。

 ミカが『そうよ、そうよ』と同意している。

 本心はまるでユキがいつも一緒で邪魔だと言っているように聞こえた。

 今にも咆哮しそうにトイラはミカを見ていて苛立っていた。

 キースが目配せし、落ち着けと知らせている。

 トイラはあてつけに何も言わず黙っていた。

 それをミカは勝手にいいように解釈し、肯定の意味にする。

「やった! トイラも行くって」

 ミカはあたかもユキに勝ったといわんばかりだった。