お弁当を食べ終わったユキは片付けるや否や、すぐさま席を立った。

「ユキ、ドコヘ イク?」

 キースが尋ねる。

「ちょっとね」

「オレ モ ツイテイク」

 トイラが言った。

「なんでトイラがついて来るのよ。関係ないでしょ」

 ユキはさっさと教室から出て行った。

 そのすぐ後、ミカが得意げに英語を話す。

 知ってる言葉を丸覚えしただけの簡単なフレーズ。

「Let's go to Karaoke after school」(放課後カラオケ行きましょう)

 トイラは虚を突かれ戸惑っていると、他の女子生徒が集まってきた。

「五十嵐さん、英語話してる。何を言ってるの?」

「放課後カラオケに行こうって、誘ってたの」

 五十嵐ミカがそういうと、周りの女子生徒が『私も行く』とのってきた。

 あっという間にトイラとキースの周りは女生徒に囲まれた。

 ユキが突然席を立ったのも、二人にはわかっていた。

 ミカにあんな風に言われて平然としていられる訳がない。

 ここは我慢すべきだと二人は目を見て合図していた。