それから夕方まで、私たちは部屋の中で過ごした。


あともう少し。


家から出なければ、板垣は助かる。


やっぱり、指令書に頼らなくても悪いことを防ぐことができるんだ。


それを今まで、私たちがやってこなかっただけ。


運命は、自分たちの手で変えられる。


「腹、減らないか?」


そう言って板垣が立ち上がった。


ここに来る時、コンビニでお弁当やお菓子を買い込んできたが、やることがないためにもう食べ尽くしてしまったんだ。


「母さんが、カレーを作ってくれてある。妹の大好物なんだ」


「だからいい匂いがしてたのか」


彰が舌なめずりをする。


どうやら、お腹が減っているらしい。


「あっためてくる」と板垣が部屋を出て行こうとするので「私が行く」と引き止める。ここから出すわけにはいかない。


なんとしてでも板垣を守らないといけない。


「大丈夫だって。家からは出ないし、キッチンに行くだけだ」


「でも__」


「お客は座っててくれよ。すぐ戻るから」


と、さっさと部屋から出て行く。


「家の中なら、安全だろ」


「うん、そうだけど」


「光莉は意外と心配性だな」


「意外とってなによ」


「いや、優しいんだなって、見直しただけだ」


柔らかく微笑む彰と、しばらく見つめ合う。