これまで知らなかった、板垣の一面。


もし、私たちがゲームで関わらなければ、決して知ることがなかっただろう。


妹思いの、優しいお兄ちゃんなんだ。


だから私は__。


「板垣、ごめん」


「なんだよ、急に」


「いや、やっぱり私のせいだし。私が参加者に名前を書かなかったら、こんなことになってない」


それはずっと、私の心にあった。


未知瑠に言われるずっと前から、みんなに申し訳ないと思っていた。


私が、軽い気持ちで名前を書いたばっかりに。


「なんだよ、仁科らしくないな」


そう言って、鼻で笑う板垣。


いつもなら憎らしくて仕方がないが、この時ばかりはなんだか救われた気がした。


「いい思いもしたし。3億円は惜しかったけどな」


「なんだよ、やっぱり俺のせいだってのか?」


彰が睨みつける。


「僕はこう見えて、根に持つタイプだから」


「どっから見てもそう見えるけどな」


「失礼だな!」


真面目な板垣と、やんちゃな彰が心を通わせて言い合っている。


信じられない光景だったが、しっくりしている。


このまま、このまま何事もなく過ごしたい。


このまま、明日を迎えたい。


いや、迎えるんだ。