板垣の家は、二階建ての一軒家だった。


私たちは目覚めるとすぐ、教えてもらった住所に向かった。


学校があったが、それどころじゃない。


予定通り、仮病で休んだ板垣を見舞いに来たという名目で、二階に上り込む。


けれど、来たのは彰だけ。


未知瑠と亮平、友美は学校に行ったのだろう。


水臭いと思えなくもないが、人手は必要ない。


板垣が、家から出なければいいだけだ。


もちろん、本人に外出の意思はない。外に出た瞬間、車に轢かれて死んでしまうのだから__。


「食料も余分にあるから、寝るまでここに居ればいいよな?」


板垣が、縋(すが)るような眼差しを送ってくる。


「家の中なら大丈夫よ。親は?仕事?」


「ああ、夜まで帰ってこないから、遠慮せずに居てくれていい」


「なんか、落ち着かないけど__」


部屋の中を見回すと、本棚いっぱいに本が収まっていて、いかにも板垣らしい。


清潔に整理されていたが、ベッドの枕元に可愛らしい縫いぐるみが並べられていた。


「あんな趣味あるの?」


「あれは、クレーンゲームが得意なんだ。妹がいて、いつもねだられる。欲しいやつがあったら持って帰ってもいいよ」


そう言って軽く微笑む板垣は、とても優しそうに見えた。