「陽菜…好きだよ」

「私も…」

「いい…?」

「…うん」

高校1年生の夏休み。

暑い夏、彼の部屋で2人きり。

大好きな彼。

たくさんのキスをして、抱きしめられて幸せだと思った。

大人になった日、きっと忘れないと思った。

素敵な想い出になると信じた。

恋をしていたから。

信じて疑わなかった夏休み。

大好きな彼に何度も抱かれた夏休み。

外から聞こえる蝉の声が遠くなる。

彼の吐息だけが聞こえて、気が遠くなる。

汗ばんだ胸板を何度も眺めた。

大きく波打つ身体の中の熱を感じながら。

7月に感じた甘い痛みは、夏の終わりに大人の悦びに変わっていた。

そして迎えた新学期。

もう二度と恋をしたくないと思った秋。

あの日、私は恋をやめた。