4月、一番始めの登校日は、始業式兼着任式。

女子は、イケメン教師が来るのを心待ちにしている。


私には、その気持ちわからないけど…
ううん、よくわかる!!

だって、前の体育教師はものすっごくおじいちゃんだし、怒りっぽいし、何言ってるかわからなかった。

私たちが中1で、一年間だけで済んだのは、不幸中の幸い。

やっと定年退職してくれたんだから、今度こそはイケメン来ないと、やってられないでしょ!


まぁ、私たちのクラスの体育を、持ってくれるとは限らないんだけどね。
そんなことを考えながら、着任式は進んでいった。

みんな、中年の先生ばっかりで、はっきり言って面白くない。
クラスの女子も、たぶんみんなそうだろう。
ドキドキのクラス替えがおわって、今日の楽しみはイケメンくらいしか残ってないもんね!
あと、担任の先生とか。

なんて、ボーッとしながら考えていたから、女子の悲鳴に、ものすごく驚いてしまった。
「キャー!!!!!」
  「キャー!!!」
 「キャー!!!!!!!!!!!!!」
あちこちから聞こえてくる悲鳴。

顔をあげると、壇上には、目を疑うほどのイケメンがいた。


「皆さん。静かに!
中野先生の挨拶が聞こえませんよ!」
式の進行をしている、教頭先生が怒鳴る。

でも、それどころじゃないの!
やっと静かになって、イケメンが話し始める。

「皆さんおはようございます。」

「ギャー!」
先生が一言喋るだけで、悲鳴が上がる。


「おはようございます。
中野淳弥です。
担当は体育です。
よろしくお願いします。」

先生のその短い言葉に、涙ぐんでる子もいるし。

イケメンって、すごいんだな…
そのあとは、さっさと式が終わり、いよいよ担任発表。

あんなイケメン来たんだから、もう誰でもいいや。


私は、2年1組だから、そこさえ聞いてたらいい。

校長先生が、担任を発表していく。


「――――――――――――
――――――2年1組、中野先生。」

・・・・・?

「ギャー!」

女子たちの反応で、やっと意味がわかった。

やったーーーーー‼
いよいよ、新しいクラスに向かう。

新しい教室に向かっていると、親友の若菜が話しかけてきた。


「空!もうウチら最高だね!
親友で、同じクラスなれるし、担任イケメンだし。」

「うん、ホントそれ!」

だけど、私には一つ、心配事があった。