先生がそう言うのと同時に、「お邪魔します！」と元気な明るい声が扉付近から聞こえてきた。


『お邪魔します！』って．．．。家かよ。


「じゃあ若菜くん。さっそくだけど自己紹介してもらおうかな」


転校生の子は黒板の前に立つと、すぅっと息を吸って話し始めた。


「ほっ、本日はお日柄もよく．．．」


「いや落ち着けよ。第一声がそれって意外過ぎるわ」


クラスで「不良」と恐れられている八木裕紀（やぎゆうき）が転校生の第一声にツッコミを入れた。いつもなら『うるさいな』と裕紀の茶々に心の中で文句を言っていたが、今回だけは『よくやった』と言いたい。


「す、すみません！えと、若菜仁（わかなじん）ですっ！」


へぇ。仁か。珍しい名前だな。


「若菜くんへの質問は６時間目の総合ときにやるとして、どこに座ろうか．．．。あ！」


その時、先生の目と私の目が合った。おいおい、嘘だろ。


「若菜くんは陽菜ちゃんの隣に座ってもらおうかな。陽菜ちゃん、若菜くんのことよろしくね」


うん。予測はできてました。できてましたけども。先生適当すぎだと思います。