そんな2人の会話を意識の隅で聞きながら、
俺はぐったりと項垂れていた。


行列の間を通る度、マスクの間から漏れる香水...。


頭では大丈夫だと分かっていても、
つい体が反応してしまい、俺はさらに気分悪くなる。


見れば、律佳も同様に項垂れていた。



徠「へーきか?桜舞、律佳」


李「はい。水」



徠と李利が端の方にある自動販売機で冷水を買って、
俺ら2人にそれを渡してくれた。


俺はお礼を言ってから、それを受け取り、
一気に喉へと流し込んだ。


ひんやりとした冷たさが
少しだけ俺の気分を和らがせてくれた。


ホッと息をつく。


...俺が女だって分かってからも、
徠たちは特に変わることなく俺と接していた。


俺は正直驚いていた。


大体の人はそれを知ると、俺から離れていくから。


理由はもちろん承知の上だ。


気持ち悪い。


そりゃそーさ。


女なのに、男の格好をして、男のフリをしているんだ。


気持ち悪いはずだ。


ちゃんと理由があるんだけどな...。


李利や照はそれを知ってても俺のそばにいてくれる。


もうこれ以上増えることは無いんだろうと思っていた。


でも違った。