あなたを、海賊の僕が奪うから




香織は、無言で湊の後を追っていた。偶然、他の海賊に襲われ、2人は剣を交えた。

香織の後ろから海賊が現れ、それに気がついた香織と海賊の間を1つの影が通り過ぎる。

「キャプテン。大丈夫ですか?」

現れたのは――船乗りの海斗と海賊の仲間。その海斗たちの姿に、香織は驚く。

「お前、来るの遅いよ」

湊が海斗を見ながら言った。海斗は、湊を見ながら微笑む。

「キャプテン、海斗さん、湊さん。ここは俺たちが止めますので行ってください!」

「分かった。キャプテン…湊。事情は後で話すから行くよ」

「…はいはい。香織、遅れをとるなよ!」

「分かってるよ。うるさいな」

香織と湊と海斗は、海賊の間をくぐり抜けた。それでも海斗は、走り続ける。その後を香織と湊は、追っていた。海斗は、とある洞窟の前で立ち止まる。



海斗は洞窟を進みながら、香織と湊がいなくなった時のことを話した。

「そのマニュアルに、1つの手紙が挟まっていたんだ。その手紙には、『大海に浮かぶ小さな島に宝を隠す』という文字と地図が入っていて、それがこの島なんだよ」

薄暗い洞窟を、照らしながら香織を先頭に歩く。その話に、香織は反応した。しかし、洞窟はここで終わっている。

「あれ、ここにお宝があるはずなのにな」

「ねぇ、香織?」

湊が立ち止まり、香織に声をかけた。香織をからかうためだ。

「…そのお宝は、香織だよ?…あなたを、海賊の僕が奪うから」

湊の言葉に、香織の顔が赤くなる。湊は意地悪そうな笑みを浮かべ、「冗談だよ」と言った。

刹那、洞窟の地面が崩れ落ちる。湊は、海斗と香織の体を包み、湊だけが地面に叩きつけられる。

「うわっ、天井が崩れたと思ったら…人が降ってきた!?あ、あの…大丈夫ですか?」

「うっ。大丈夫…」

湊は、よろめきながら立ち上がる。それを海斗が支える。

「た、助けてくれ!村まで海賊が来たぞ!」

この洞窟に1人の男性がやってきた。その村の村長は、白髪頭を抱えた。

「…私達は、海賊。もし、お宝をくれるのであれば――」

「お宝なんか要らない!さっさと海賊を倒して、帰ろう」

湊は、出口に向かって歩き始めた。それを聞いた村人が嬉しそうに湊を見つめた。



村にいた海賊を全て倒し、湊たちに向かって長老は頭を下げた。

「ねぇ、長老。この島に本当に宝なんてあるの?この手紙…」

湊は、1枚の手紙を長老に見せた。それを見た長老は、目を伏せる。

「これは…俺が書いたものだ」

長老の後ろから男性が現れた。この男性は――海斗の父親だ。

「久しぶりだな。海斗」

「あ、お父さん…」

海斗が男性に抱きついた。湊は、それを無表情で見る。

「海斗、心配かけてごめんな。俺、嵐の後にこの島に流れ着いたんだ。その手紙は、俺が適当に作ったものなんだよ…湊くん。君の父は…生きていない」

海斗の父は、真実を告げた。湊は、辛そうな顔をした。香織は湊のいつもの態度と違うことに気づき、心配になった。

「…俺も船に乗せてほしい」

海斗の父がそう言い、香織は無言でうなずく。そして、香織たちは先に仲間が戻っている船に乗り込み、海斗の父を仲間に紹介した。

海斗の父が…ではなく、海斗が舵を握る。そして、船を動かした。



香織は、いつものように双眼鏡を片手に立っていた。

「キャプテン。もうすぐ昼食ですよ?」

「だから、私に話しかけないで」

「だから、昼食をとらないとダメだって言っているでしょ?」

湊は、香織の腕を掴んだ。その温もりに香織の鼓動が早くなり、顔も赤くなる。

「香織、顔が赤いよ。可愛いね」

湊は、香織を見て意地悪そうに笑う。香織は「うるさい!」と更に顔を赤くする。

「僕さ。この間、お宝は香織だって言ったでしょ?」

「え?あ、うん」

「あの時、『冗談だ』って言ったけど…本当は、本気なんだ」

湊の顔は、珍しく赤い。香織は、それを見て驚いていた。

「僕、香織に初めて会った時から君が好き」

湊は、香織にそっと口付けをした。
皆さん、こんにちは。陽彩です!

このお話は、友達から「こんな話を読みたいです。お願いします、書いてください」と頼まれたので書きました(笑)

それでは、またどこかでお会いしましょう。

作品を評価しよう!

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作品のキーワード

この作家の他の作品

表紙を見る
転生したら、魔王の側近でした

総文字数/10,582

ファンタジー21ページ

表紙を見る
涙、滴り落ちるまで

総文字数/81,595

ファンタジー156ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア