帰り道。


「ねぇー、美穂!授業中ぼーっとしてたでしょ?何かあったの??」

「な、何も無いよ…。ただ本の続き考えてただけだよっ」

「ふーん…そうなんだ…… あ!帰りさ、駅前の本屋さん寄ってっていい?欲しい雑誌出たんだ〜」

「うん、いいよ。私もちょうど欲しい本あるし。」

じゃあ決まりね!とユリは嬉しそうに笑う。



…ユリに話せないのは……何故?
やましい事がないなら話せばいいだけなのに…心が拒否する。
話せないんじゃなくて、話したくない…?

それって…「美穂ー?本屋着いたよ?」

ユリが私の顔を覗き込んで心配そうに、

「どうしたの?ぼーっとして。今日何か疲れたことした?」

と言ってくれた。

「あー…ごめん、ちょっと考え事してた」

そうなんだー、と言いながらユリは雑誌コーナーに向かう。

私は好きな小説家さんの最新作を探しに行った。

「うーん…どこだろ…。」

最新刊のコーナーを見に来たが、見当たらない…。
今日発売の筈だったんだけどなぁ。
まぁまた後で来るか…

そう思ってエリのとこに向かおうとした瞬間、

「わっ」
「え、きゃっ」

「いたた…あ、ご、ごめんなさい!!」

振り向いた瞬間に人がいたのに気が付かず、ぶつかってしまった。
謝って顔を上げると、

「あ、美穂先輩じゃん。」

「え…海斗…くん?」

「びっくりしたー…ぶつかってきたから喧嘩売られたのかと思った。」

「え!?そんなことしないよっ。ご、ごめんなさい…」

「いいよ、俺もよそ見してたし。てか今日図書室で会ってからすぐまた会うなんて、俺ら運命かよってな」

笑いながら海斗くんが言う。


…え?何言ってるの…?
そ、そんなわけ無いのに、顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。

顔を伏せて何も言えずにいると、

「美穂先輩単純すぎ、冗談だよ。そんなに照れられるとこっちも照れるじゃん」

と言って、顔を手で隠す。


「な、何でそんなこと言うの…!びっくりしたじゃないですか…」

まだ私の心臓はバクバクいってる。



「ははっ、ごめんて。美穂先輩がからかいやすそうだから、それだけだよ。」


何なのこの人…本当に後輩…?
失礼な…!
でもその海斗くんの笑顔から、目が離せなくなる…



そんなことを思っていると、


「あれ、美穂ー?と……え!?1年の問題児…!?」

「ん?美穂先輩の友達?…むっ、めっちゃ失礼だなー…まだ1日しか経ってないんですけど?人を見かけで判断するのはよしてくださいよ」


いや金髪で入学式来るだけで問題児だよ!!


「じゃ、お友達来たみたいだし帰るわ。じゃーね美穂先輩。また後で」

そう言って私にウィンクする。
…年下のウィンクとはどうしてこんなにあざとかわいいのだろうか。


「あ、ちょ、海斗くん…!また後でって…」

私の制止の言葉を聞かずに海斗くんは行ってしまった。



「ちょっと美穂〜…?何で知り合いなら教えてくれなかったの!」

「え、えっと…なんか話した方がいいのかわからなくて…」

「話すべきでしょ!てか、話さなかったのは話したくなかったんじゃないの?美穂の、えっと…海斗…だっけ?あの子を見る目は…絶対好きでしょ。」

ユリはニヤニヤしながら私を見る。


「え、ええ!?そ、そんなわけ無いよ。だって今日会ったばかりだよ?年下だよ?問題児だよ?」

「恋に落ちるのに適正時間は無いし、恋に年齢は関係ないよ。客観的に見て問題児の奴でも、いいやつはいっぱいいるし」


恋愛経験がない私は何も言い返せない…。


「あの子と話して、ドキドキしたりしないの?美穂」

「……した、かも。」


好きかどうかじゃなく、ドキドキしたのは事実。
…だけど、それで好きって言えるの!?

「じゃあ好きなんだよ。恋愛マスターの私が言うんだから間違いない!!」


…その割には失敗してきてるけど…。


「む、今何か失礼なこと思ったでしょ。」

「ば、バレてた…?」

「バレてるわ!もう全く…。いい?美穂。高校生活は一度きりしかないんだよ?もうこの青春は味わえないんだよ?もっと色んなことを楽しむべきだよ!!」

「つ、つまり…?」

「美穂は恋をするべき!私は応援するよ!美穂が失恋しても慰めてあげる〜」

そう言いながら私を抱きしめようとするユリ。


「で、でも!好きと決まったわけじゃないし…」

「えー、自覚してないの?てかさ、今日どこで知り合って…」

ユリの言葉を遮るように私は、

「か、帰ろ!そろそろ帰らないと親に怒られちゃう」

と出口に向かった。

「あ、ちょ、待ってよ〜」




ばいばいするまで、ユリから色々質問攻めされながら帰ってきた…。