四月。今日は入学式。
と言っても、1つ下の学年のだけど。
入学式を終えて、お昼の時間。
お弁当を出す私の席に、駆け寄ってくる女の子。
「美穂〜!あの金髪の1年見た?」
この子は私の友達の、佐藤ユリ。
綺麗な茶髪を高い位置でツインテールをしている。
チアリーディング部に入っている。
「見たよ、あの人って西中学の人だよね。西中学は荒れてるらしいって噂は聞いてたけど…びっくりしちゃった。」
今日の入学式で、一際目立つ見た目の男の子がいた。髪を金髪に染めていて、1人だけ気だるそうで…。
先生がとやかく言わないのは、一昨年までの先輩がもっとヤバかったからだろう。授業中にも関わらずに、他の学年の教室前まで出歩いているのは日常茶飯事で、他の高校の生徒と喧嘩をすることもあったらしい。
それに比べたらあの1年生はまだマシなのだろう…。
「本当にびっくりしたのはそこじゃないよ美穂!!」
ユリが興奮気味に、前のめりになって話しかけてくる。
「あの1年生、めっちゃイケメンだったじゃん!!見てないの美穂? 」
ユリの問いかけに私は首を振る。
「うーん…あの顔だったら付き合える。」
「ユリは顔で選ぶの?この前まであんなに涼のこと好きだったのに。…それに、ちゃんと中身見ないと。」
私がそう言うと、ユリは不機嫌そうな顔をして、
「だって涼くんに振られたんだもん!新しい恋を始めなきゃ立ち直れないよ〜…」
涼は私の幼なじみ。
ユリが去年の夏から好きになって、ついこの間告白したけど断られてしまったらしい…。
「でも、涼はユリの魅力に気付いて無いだけだと思うんだけどなぁ…。」
「ん〜そうかなぁ…。でも確かに、私はやっぱり涼くんが好き〜!美穂、どうにかしてよ〜…。」
「いやそう言われても…私には無理だよ。涼と最後に喋ったの中学の卒業式だよ…?」
「うー…分かってるよ?無理なことぐらい…でも新しい恋なんて考えられなーい。だってさぁ涼くんがね、…」
ユリの涼の話を聞きながら、食べ終わったお弁当をしまう。
「でさー、こんなの期待しちゃうと思わない!?」
「うん、そうだねぇ。……あ、そろそろ図書室行ってくるから、また。」
「せっかくの入学式の日まで行くのー?また第1図書室??」
「うん、ごめんねユリ。帰りに話聞いてあげるから。」
はーい、と返事をしてユリは違うグループのとこに向かう。