そこでふと気づいて口に手を当てる。

初めてあった人に名前を呼ばれては、怪しまれる。当たり前のことだ。


しかし…



「ねえ、君なんて名前なの?」


空はまるで無視するかのように、いや、そもそも聞いていないようだった。


悪い予感は的中していた。

私はこの世界に存在していないのだ。


いや、語弊がある。


この世界に、2人の私は存在してはいけない。そういうことなのだろう。


優先されるのは、元からこの世界にいた幼い頃の私。



考えてみれば、当然の話だった。


しかし、それは絶望でもある。



この世界で私の影響力は皆無なのだ。