入ったこともないような奥の部屋に行くと、そこには大きな振り子時計があった。



「これ、この時計屋に来た時にはもうあったんだ。」


そういえば、この時計屋は空の店ではない。


意識が具現化しただけの空が、お金を持っているはずもなく、誰もいないことを知って勝手に住んでいたらしい。



その振り子時計のそばに脚立を持って行き、空がのぼっていく。


私はせめてもと、脚立の足をしっかり押さえる。


さびているのか、時折ギギッという音もするが、この際気にしていられない。



空との間に会話はない。

ぜんまいを巻く音だけが大きく響く。


「よし。」


「巻き終わった?」


「うん。」



ゆっくりと脚立を降りる空。


カチッと音がしたかと思うと、歯車の動く音が心地よく届いてきた。