「ここは、見ての通り時計屋なんだよ。アンティーク専門のね。もちろん買えるけど、学生には高いかもよ?」


私は買うつもりなどないのだが、それより気になることがある。


「あの、あなたの名前も教えて貰えませんか、?」



相手はふふっと笑った。今度はわかりやすく。


「俺の名前は…」


謎の数秒の間を残し、彼は答える。

「空(そら)。」


「あの、苗字は?」

私から質問をするなんて本当に今日はどうしたのだろう。


「苗字は、今は教えられないんだ。ごめん」



本当に申し訳なさそうに答える姿をみると、これ以上聞くのは悪いな、と思った。


「いいんです、こちらこそ、ごめんなさい。」