勢いよく病室に入ると私の周りを流れていた時が止まった。冷たい時間が私にまとわりついてくる。

「亜香里ちゃん。」

この声でふと我に返った。
誰よりも悲しいはずのこう君のご両親が優しく私に喋りかけてきた。

「………幸一はね、死ぬ直前にこう言ったのよ。
『あーちゃん』って。
だから、お別れを言ってやって。」
「……はい。」

私は今の状況を理解出来ていなかったようで、私はひたすら冷静だった。
私はこう君の頬に触れてみた。

冷たい。

こう君は本当に死んだのか?実感が全然わかない。私は現実から逃げるようにこう君の病室だった所を後にした。