二人しかいない静かな部屋に、ストーブ特有の油の匂いが鼻を刺激する。
先生がページをめくる音がとても心地いい。
このまま時間が止まってくれたら、と願う。
ずっと二人だけの世界で……。
でも、時間は容赦なく進む。だから、私はこの物語を終わらせなくちゃいけない。
あの、ちょっと癖っ毛の髪も、
長い睫毛も、
右眼の下の色気あるホクロも、
柔らかそうな唇も、
全てが愛おしいと思う。
すき、だから。
強い、炎の様に燃え上がる小さな光が私に勇気をくれる。
そう思ったらペンはするりと白い紙を塗りつぶしていった。
あと三日の終わりに向けて……。