「もうすぐで電気つくから、いまのうちにトイレいっとけよー」
ケータイゲームの音とか、友だちと話す声とか、また周りが騒がしくなってきた。
……空もゲームしよ、って思ったんだけど……
「んぅぅ……」
さっきから隣の席の方が夢にうなされててなにも集中できないんですけど……
最初は寝言かなって思って気にしないようにしてたんだけど、なんか可哀想になってきた。
あっち向いてるからどんな顔してるか分からないけど、いい夢じゃないよね。
起こしてあげたほうがいいのかな……
もうちょっとこっち向いてくれたら……どんな顔してるか見えるんだけど……
「うぅ〜」
……また
気になって、我慢できなくて、えぃって顔を覗き込んだ。
こういうのはだいたい、してから後悔するもんだ。
あ……これは見ちゃだめなやつ……
「……さみしい」
苦しげに閉じた瞼。
濡れたまつげと、目尻に残る涙の跡。
スクリーンに近い電気がつき、明かりの波が点滅しながら近づいてくる。
消すのは一瞬なのに、またつくのは、こんなに時間がかかる。
ずっと、りょうたは笑っていた。