木の下に着き、地面を触ると予想通り少し湿っていた。ブルーシートを二つ折りの状態にして地面に敷くと、丁度横になれるぐらいの広さになる。

ノートを開くと『いつもの木の下で変わった少女に出会う。歳は18、9。愛想は無いが中々の美少女』と、書いてあった。

思わず頬が緩んでしまう。

10年前にも似たような事をノートに書いた記憶が鮮明に頭に浮かんだ。

それは高校を卒業して大学が始まるまで春休みの事だった。いつもの様に大木を背にノートを広げていた俺は人の気配を感じて振り返った。

『やあ少年。こんな所で何をしているんだい?』

そう言って覗き込むように腰を折る彼女は美しく、俺は吐こうとした空気を思わず呑み込んだ。

柔らかい曲線を描く輪郭、片手に収まってしまいそうな小さな顔、形のいい眉の下には大きな瞳があり長い睫毛がかかっていた。スッと通る鼻筋、薄い唇はグロスの所為か光沢を帯びて艶めかしく光る。