「何それ?ウザい」

「ウザいってなぁ」

女の子は立ち上がりお尻を2、3度叩き歩き出す。そのまま振り返る事もなくやがて背中は見えなくなった。

「なんだったんだ?」

俺は誰にも聞かれない言葉を吐いてから、鞄の上に置いたノートに手を伸ばし

『いつもの木の下で変わった少女に出会う。歳は18、9。愛想は無いが中々の美少女』

と、殴り書きした。

翌日は小雨がぱらつく嫌な天気だったから、仕方なく仕事部屋でパソコンに向かって1日過ごした。パソコンに向かっていた時間と仕事の進み具合は見事に噛み合わなかった。



次の日の昼には雨は上がっていたが、木の下の地面は乾いていないだろうと予想して、適当な手下げ袋にブルーシートを突っ込んで家を出た。

いつもの街並みは当たり前の様にいつも通りだったが、10年前とは大分様変わりしていて、同じ様に見えていても少しずつ変化していっているのだと今更のように思い知る。