運良く趣味をそのまま仕事に出来たのに、仕事になった途端楽しくなくなってしまった。趣味は趣味だから楽しかったのだと今更のように思う。

「つっても辞められないしなぁ」

開いたばかりのノートを閉じて鞄の上に捨てるように置いて体を横たえた。

目を閉じると瞼の裏に美しい顔の女性が見える。

「ねぇ、おじさん」

瞼の裏の女性が語り掛けて来たのかと思ったがすぐにそうではないと気付く。彼女が俺を『おじさん』などと呼んだ事は一度もなかったからだ。

ゆっくりと瞼を持ち上げると1人の少女が立っていた。

「おじさんってまさか俺の事か?」

歳は20歳にはなっていなさそうだ。平日の真っ昼間から私服でうろついている事を考えれば高校生ではないだろう。

「他に誰がいるのよ」

ぶっきらぼうにそう言った女の子は、つまらなそうに俺から視線を外した。