直斗は何も言わず、ごくフツーに志保と一緒に帰り始めた。

 志保からは最初、『星谷くん』と呼ばれていたのに今では『直斗』と親しく呼ばれている。
 直斗の方は『灰原さん』から『灰原』と呼んでいたのを、今では『志保っち』と呼んでいるのだ。
 志保は直斗に近寄り、腕に手を回した。

「今から直斗の家に遊びに行こうかな?」

「ハァ? 今から」

「今夜はウチは誰もいなくて私が1人で留守番しているから、直斗の家に行ってもイイと思っているの」

「遊びに来るってワケか?」

「直斗は家ではいつも1人でしょう?」

 そう。

 直斗の父親…星谷雅敏と母親…由希子は仕事の関係でニューヨークで暮らし、一人息子の直斗だけ東京で暮らしているのだ。
 志保は家庭の状況を知っていた。