自分の胸を、ぎゅっと押さえる。
意を決して、私は振り返った。
「北條先輩!!」
自分でもこんな大きな声が出たのかと驚くほどの大きさで、大好きな人の名前を呼んだ。
もう......いやだ。
これ以上、言い訳も否定も、先輩への気持ちに嘘をつくことも、したくないっ......。
廊下にいた人の視線が、一斉に私に集まる。
放課後の人通りが多い廊下で、とんでもなく目立つ行動だと思いながら、もうそんなことどうでもよかった。
少し離れた場所まで歩いていた先輩にも声が届いたのか、北條先輩はピタリと足を止めて、こちらを振り返る。
先輩だけをじっと見つめた私の口から出たのは......、
「行かない、でっ......」
さっきの大きな声とは違い、今にも消えそうな、情けない声だった。