そして......北條先輩の、酷く傷ついた顔が視界に映った。


慌てて、視線を下に向ける。

教室の真ん中で、なにしてるんだろう。

北條先輩の顔を見れなくて、俯いたまま、先輩にだけ聞こえる大きさの声で言った。



「もう......私のことは放っておいてください」



まだ強く握られている手を振り払って、教室を出る。



「香織ちゃん……!」



私の名前を呼ぶ先輩の声が聞こえたけど、振り返らずに、逃げるように走った。



こんなに全力で走ったのはいつ振りだろうと思いながら必死に走っていたら、いつの間にか周りには生徒の姿はなくなっていて、人通りの少ない帰り道にひとり。

ようやく足を止めて、乱れている呼吸を直すように大きく息を吸い込んだ。

そして、ため息混じりの息を吐き出す。



「私、なにしてるんだろう」



先輩の傷ついた表情が、脳裏を過ぎる。