その背を見送った私は、鞄の中からあるものを取り出して教室に隣接するベランダへとでた。

学校を囲む山に夕陽が沈んでいくのをただ静かに眺めていた。


「さようなら、私の青春」


少しふやけた紙飛行機を空に向かって飛ばした。

何も書いていない白紙。

書ききれなかった想いを書こうとしてやめた。

私の気持ちは卒業と共に置いていくことにした。


「先生、好きでした」


白い紙飛行機が赤く染まってどこかへと消える。


「さーてと!帰ろっかな」


深い意味はなかったけれど、教室を出る直前でもう一度振り返った。


「卒業おめでとう、私」