いきなり振り返ったと思ったら、
皿に乗ってた団子全部食っちまった!
「・・・ウグッ!ゴホッゴホッ!!」
「ほら喉につまらかす。
水持ってくるからお待ちくなんせ。」
立ち上がってすぐに桶から水をすくいにいく。
「・・・・早く・・しろ!!」
・・ふぅ~・・まったく・・。
畳に寝っ転がって、手足をじたばたさせるあのお方の名は玉山 一島さん。
あっしの3つ歳上で、
尾張にある同じ村で生まれ育ち、
血は繋がっていないけど本当の兄貴のように慕ってきたお方。
更に同じ村には木下 藤吉郎・・・じゃなくて、
羽柴 秀吉さんというもう1人、
“兄貴”と慕っていた人物がいた。
幼い頃から玉さん、羽柴のお頭といつも三人で遊んで、
夕暮れ時にはみんな泥だらけになって、
おっ母に叱られて・・・
歳を重ねて、時勢が室町幕府から戦国の世に流れていっても・・
羽柴のお頭が信長親分に仕えるようになり、
主君、家来という主従関係があっしらの中に出来ても・・
決して心の関係は変わらなかった。
・・・ただ!
それはあくまで気持ちの問題。
家来が主君に張り手を食らわせば面子が立たないし周りも黙ってない。
中国攻めを控えた景気づけの宴で悪酔いした羽柴のお頭が、
酒を注いで回っていた女中の一人の腰に手を回し、
胸に手を伸ばそうとしたところで玉さんが切れちまった。
結局、玉さんは謹慎処分を言い渡されて、
あっしが見張り役という事で二人一緒に、
織田領の小さな村、
“加賀井村”へ左遷されてきた。