半年前に両親は交通事故に巻き込まれて他界した。

唯一の身内である母方のおじいちゃんの家は空きの部屋がなく
毎月2万の仕送りで友達の家に住まわせてもらってほしいと言われてしまった。。

でも誰にも心配かけられない。


当時近所に住んでいたおばさんが管理してるアパートに月3万で住まわせてもらい、
足りない分はアルバイトをして生活している。


そんな私に入院なんてするお金あるはずないし、おじいちゃんにも頼れない。

「いくらかかりますか?入院とか検査とか……」

落ち込みつつ先生に質問すると
先生はノゾミに席を外すように言った。



仕送り2万 バイト代6万

家賃 3万
光熱費1万
食費2万
携帯代1万

毎月の貯金出来るお金は1万程度。
貯金額は5万程度しかない。
「どうしてそんな事を気にするわけ?」
何も知らない先生はそう質問してきた。

「どうしてもダメだから……
そう言いかけると涙が出てきた。

先生にわかるはずない。
そんな気持ちがどんどん溢れ今まで我慢してきた涙がとまらなくなった。


「ケホッ!ケホッ…ハァハァ……ケホッ!」

そしてその我慢は涙と喘息の発作になって襲ってきた。
院長である親父から話は聞いていた。

この子の親が半年前に運ばれてきてこの病院で死亡が確認された事を。


「ケホッ!ケホッ…ハァハァ…ケホッ!」

泣き出した咲良ちゃんがとつぜん苦しそうにし出した。

…まじかよ。
俺は脈を確認し、聴診をした。

「喘息か。」

ナースコールを押し、吸入器を持ってくるように頼むと、咲良ちゃんの体を楽な体制にさせ

「咲良ちゃん、ゆっくり息してみようか。」

「ケホッ!……だい…じょ……ぶ…ケホッ!」

つよがりめ。
吸入器で多少は落ち着いた。

「落ち着いたのでもう大丈夫です。帰らないと」

「理由。」

「へ?」

「ちゃんとした理由がないと帰せない。」

強めに言うと咲良ちゃんは全てを話してくれた。


両親が亡くなってからはバイトと仕送りで暮らしてた事
貯金がほとんどない事
そしてそのことを誰にも相談できていない事も。

「今まで喘息の発作出た時どうしてたの?」

「とりあえず落ち着いて我慢してました…」

この子は全く。

「ごめん。」
そう言って俺は咲良ちゃんを抱きしめた。強く強く。
「ごめん。」
そう言ってイケメン先生が抱きしめてきた。

えぇぇぇ!??
「ちょっ……先生!?」

まって!まって!状況が読めない!

「咲良ちゃん聞いて。とりあえず検査入院はしてほしい。入院代も検査代もいらないから。」

いらない??

「ダメですそんなの!みんな平等なんです。私だけそんなの。時間かかるかもですがバイト頑張って少しずつでも払います!」
「その足でどーやってバイトすんの?」
私の右足は二ヶ所にヒビ、一ヶ所は折れていた。

「これくらい我慢できます!」
私がそう言うと

「ここ痛いだろ?」
と意地悪そうに私の足を触りながら先生は言った。

「いっ……たぁ………」
思ったよりも痛くて涙が出てくる。

「今の咲良ちゃんにはバイトどころかまともに歩くことも出来ないんだよ。」

「だから……」

「俺と付き合えよ」

「俺と付き合えよ。」

「へ!?」

あれ?
何言ってんだ俺。

わかりやすく顔を赤らめる咲良ちゃん。

「先生……あのっ」

「俺がなんとかするから。だからもう我慢すんなよ。気だって使わなくていいから。」

この子を見ていると自分の感情が抑えられなくなるのがわかった。

顔が熱い。
でもこの子を放っては置けない。
そんな気がした。