逃げるように、病室に戻ろうと、今度は階段で駆け上がる。
2階についたとき、ちょうど新川先生が歩いてきた。
「あれ、菜摘ちゃん。ちゃんと寝てないとだめですよ、病室で休ませておいた意味がないですね。」
私は、ぐっと奥歯を噛み締めてから新川先生の顔を見る。
さっきまでと変わらない、穏やかな表情をしていた。
「……先生。」
「はい?」
笑顔を崩さない先生を見て、大丈夫だと自分に言い聞かせる。
「私、病気じゃない、ですよね。」
「…え?」
……今、先生の顔………。
私は、ほんの一瞬だけ新川先生の笑顔が薄れたことに気づいてしまった。
決して鈍感では無い自分が嫌になる。