そして、お母さんたちに背を向けて病室に戻ろうとした。
声をかけずに帰ろうと思ったのは、嫌な予感が、していたからなのかな。
「……どうして、菜摘なの…?」
後ろ耳に聞こえてしまった言葉に、ぐっと奥歯を噛み締める。
本当に、病気なんだ。私。
お母さんが泣いちゃうような、
そんな酷い病気なんだ。
それでも、私はまだ、そんなはずないってどこかで信じていた。
気のせいだ、勘違いだ。
だって、だって私、今まで風邪にすらならなくて。
お兄ちゃんは毎年、予防注射をしてもインフルエンザにかかるけど。
私は予防注射しなくても今まで1回もかからなかった。
………そんな私が、病気になんて。
なるはず、ないんだ。