自室で服を脱ぎながらも、買ってきた彼女へのプレゼントのショップバックから目が離せなかった。
 もう彼女の前で持っていたし、サプライズをするのも変だと思い、葵音はすぐに黒葉に渡す事を決めた。それに、自分がそれまでに我慢出来なさそうだと感じたのだ。
 服を着替えてから、バックを持ってリビングへと向かった。
 すると、黒葉が氷を沢山入れたアイスコーヒーを持ってきたところだった。


 「あ、丁度よかったです。葵音さん、アイスコーヒーでいいですか?」
 「あぁ、悪いな。」
 「いえ。暑かったので水分補給してくださいね。」


 そう言うと、黒葉は家事に戻るのかキッチンへ行こうとしてしまった。それを、葵音は「黒葉。」と、名前を呼んで引き留めた。
 すると、不思議そうな顔をしながらも、葵音の元へと戻ってきた。


 「どうしました?お腹空きましたか?」
 「違うよ。……これ、黒葉にプレゼントだ。」
 「えっ……。」


 葵音が差し出したショップバックを見つめ、黒葉は目を大きくして驚いていた。
 

 「プレゼントって、私、誕生日はまだですよ?」
 「おまえに似合うと思ったんだ。それに、彼女にプレゼントするのは彼氏の特権だろ?」
 「………そうなんですか……。」


 黒葉はこういう事に慣れていないので少し戸惑っている様子だった。
 受け取っていいのか迷っているようだ。


 「黒葉、貰ってくれない?俺もその方が嬉しい。」
 「………ありがとうございます、葵音さん。」


 黒葉ははにかみながらショップバックを受け取った。
 そして、嬉しそうにそれを見つめていた。
 とりあえずはサプライズを喜んで貰えた事に、葵音は安心した。


 「開けてみてもいいですか?」
 「あぁ。」


 黒葉は、リビングのソファに座って、大切そうに包みをほどいていった。それを見つめる葵音は、きっと彼女よりも緊張している自身があった。


 「わぁ………かわいいサンダル。ヒールも高すぎないので歩きやすそうです。それに、カーディガンですね。色が鮮やかで綺麗です。」
 「よかった。気に入ってもらえて…。これを着て旅行に行って欲しいと思って。」
 「……旅行のために買ってきてくれたんですか?」
 「あぁ。あと1つあるから、それも見てくれ。それが黒葉に似合うと思ったんだ。」