「んっ……黒葉………?どうしたんだ?」
「あ……葵音さん。」
抱き締めていた黒葉が動いたことで、葵音は起きてしまったようで、ゆっくりと綺麗な茶色がかった瞳を開いた。
「黒葉……また、泣いてるのか?どこか体が痛い所あるのか?」
起きてすぐに自分を心配してくれる彼の優しさにキュンとしながら、黒葉は自分で目に溜まった涙を手で拭った。
「幸せだなぁーって思ったら、何故か泣けてきてしまったんです。」
そう言って涙の意味をごまかす。
すると、葵音は嬉しそうに微笑んで、黒葉の目元にキスを落とした。
「泣くなよ。……おまえには笑っていて欲しいんだ。」
葵音の言葉に、黒葉は微笑みながら頷いた。
そうだ。
泣いているなんて勿体ない。
大切な彼と笑っていられる時間を作っていこう。
黒葉は、この時にはもう終わりが近い事に気づき始めていた。
★☆★
初めの旅行まであと数日に、なった頃。
黒葉は珍しく買い物に出掛けた。
1日用の旅行バックが欲しかったようで、「今回だけは奮発しました。」と、お気に入りのバックを買ったのを嬉しそうに見せてくれた。
それぐらいに黒葉が、星空を満喫する旅行を楽しみにしているのがよくわかっていたので、葵音もその準備をしっかりしておかなければ、と思っていた。