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今日は新月の暗い夜だった。
昼間の雨雲はすっかりとなくなり、今は綺麗な星空が広がっていた。
今年の梅雨は、あまり雨も多くないのでよく星が見えた。
黒葉は、葵音から借りている部屋の窓から夜空を見上げていた。
キラキラの輝く星を何度見ていただろうか。
きっと黒葉は星を見るのが好きなのだろう。
だけれど、それは半分嘘だった。
星は好きだけど大嫌いだった。
「葵音さん………、どうしてあんな事したんだろう。」
昼間の事を思い出し、黒葉はまた顔を真っ赤にした。
突然のキスに、今でも鎖骨に残る赤いキスマーク。
それの赤い跡に触れると、何故か熱があるように感じてしまう。彼に唇を当てられたように。
彼の熱を感じるのは嫌いではなかった。
むしろ、体は喜び、気持ちも高まった。
それなのに彼に近づく度に、終わりが近くなってしまうようで、怖くなってしまうのだ。
葵音は少しずつ自分に心を許してくれているのもわかっていた。
口づけをしてくれるのは、もしかしたら………と考えてしまう事なんて、何度もあった。
けれど、そういう関係になってしまったら。
恐怖で次に進めなかった。
けれど、彼に触れられたい。
彼を独占したい。
好きになってほしい。
…………葵音の体温と香りと彼自身を感じたい。
彼と共にいるうちに、その願いが大きくなっていくのだ。
「葵音さんが好き。」
首筋に手を添えたまま、小さな声でそう呟いた瞬間だった。
葵音はまたあの感覚を感じて、両目強く閉じて、両手で目を押さえた。
涙がぼたぼたと大量に流れてくる。
「あぁ…………イヤっ…………いや…………。」
大きな声を出したら彼が心配してしまう。
それだけを思いながらも、目を押さえながらじっとその時間を堪えた。
涙が手や、腕、パジャマや床落ちる。
息を荒げながら、黒葉はその苦痛の時間を必死に堪えた。