17話
葵音は、濡れた服を脱いで椅子の上に置き、ズボンだけを履いきタオルで髪を拭きながら買ってきたものをキッチンに置いた。
その後は、ソファに座ったまま頭にタオルを掛けて呆然と窓を打つ雨水を見つめていた。
後悔したのはその時だけで、冷静になると、あれが自分の気持ちだと葵音は気づいていた。
きっと今まで隠していた気持ちが爆発したのだろう。そんな気がしていた。
今までは彼女の秘密のせいにして、自分の気持ちに蓋をしてた。
けれど、いざ黒葉がいなくなるかもしれないと思っただけで、あの行動だ。
必死な思いが理性や冷静さを壊してしまった。
これで、葵音の気持ちはもう決まっていた。
むしろ、同じ屋根の下でよく我慢してきたものだと自分を褒めてやりたいぐらいだった。
けれど、肝心なのは、黒葉の気持ちだった。
彼女が自分に好意を持っているのは、わかりすぎるぐらいに理解していた。
けれど、彼女は自分から気持ちを伝えることはなかった。
今の状態のままで満足しているかのように、彼女は葵音の隣にいるだけで、幸せそうに微笑んでいた。
そんな彼女に手を出した。
キスはしたことがあったけれど、キスマークまで付けてしまったのは、ダメだっただろうと……と、考えが振り出しに戻ってしまった。
そんな事を考えているうちに雨は止み、少しずつ空に明かりが出始めていた。
「お風呂、ありがとうございました。」
少し気まずい様子で、黒葉が脱衣場から顔を出し、ゆっくりとリビングに入ってきた。
ほんのり頬が赤いのはお風呂に入ったからなのか、先程の葵音からの行為を思い出してしまっているのか。
けれど、彼女がこちらを見ずにモジモジする様子を見て、葵音は黒葉が恥じらっている理由がやっと理解出来た。それは、葵音が上半身裸だからだった。
そういえば、こんな姿見せたことなかったな、と思いながらも男慣れしていない純粋な彼女を見て微笑ましく思ってしまう。