累と別れる頃には、もう夕日が沈む時間になっていた。
空いていたショッピングモールも、学生や仕事帰りの人々で溢れかえっていた。そんな、雑踏を夕日は赤く照らし、その普段の光景さえも鮮やかで綺麗に見せてくれていた。
「今日は悪かったな。俺の友達が途中から一緒になってしまって。」
「いえ、とっても楽しかったです。累さんは、やはり葵音さんと雰囲気が似てますね。」
「そうか?初めて言われたな。」
ショッピングモールを歩き、車に乗りながら葵音は苦笑した。
昔は口も悪かったし、女遊びもしていた。累の言うように、今の葵音は変わったのかもしれない。
そして、優しい男にやろうとすれば、いい見本は累だったのかもしれないな、と葵音は思った。
「優しいところとか、ふんわりと笑うところが似ています。あ、でも………葵音さんの鋭い視線の時は、男の人!って感じがするので、あんまり似てないかもしれないです。」
黒葉の言葉を聞いて、葵音は自分の事をよく見ているんだなと思い、心の中で笑ってしまった。
「あ、そういえば。水族館で、ぬいぐるみを買った時に何か貰ったんだ。それも黒葉にあげるよ。」
「え………なんだろう?」
黒葉は大切に持っていたぬいぐるみの入っている袋に手を入れて、目的の物を探していた。
「ありました!………お揃いのストラップ!しかも、イルカです。」
「よかったな。黒葉のスマホには何もついていなかったし、付ければいいんじゃないか?」
「はい!」