「月はあまり良くないんだ。」


 累は、月のカードを持ってじっと見つめる。
 

 「予期せぬ危険や不運を暗示しているんだ。」
 「…………。」


 その言葉を聞いて、葵音はドキッとし黒葉を見た。彼女は、まっすぐ前を向きそのカードを見つめていた。それは、とても儚く悲しげなもので、湖で星を見つめている時と似ていた。


 「目標を失っていたり、その道が幻影だという忠告でもあるよ。迷っていたり混乱しているなら1度落ち着いて考えるといい。月が見せる幻影に踊らされないで、自分の思いや直感で進むといいよ。………もし、僕の占いが当たってたらね。」


 真剣な表情で占い結果を説明し、最後は笑顔で締めくくる。これは黒葉が不安にならないようにとの彼の配慮だろう。
 黒葉は、少しぎこちなく微笑み「当たってますよ。」と言った。


 「累さんの占いはすごいですね。過去と今も、思い当たることが多すぎます。………それに未来も。でも、大丈夫です。だから、私はここに居るのです。」
 「………そうか。君はきっととてもよく考えているんだろうね。」
 「………だから、月は嫌いなんです。」


 切なげに言いながらも、月のカードから目を離さない黒葉を、葵音はただ見ていることしか出来なかった。
 累や黒葉が話している事が全く理解出来なかったのだ。今日会ったばかりの黒葉と累は、何か分かりあっているようで悔しくなる。


 「占いだからな。気になりすぎるなよ。」
 「僕の占いが当たるからって信じてるのは葵音でしょ。」
 「当たらないときもあるだろ。」
 「葵音のはすべて当ててるけどね。」


 ニッコリと笑い、意味ありげな視線を向けてくる累を見ると、葵音の気持ちが全て読まれていると分かり、ますます負けた気持ちになってしまう。
 それを見て更に累は笑った。