「あ!おみやげやさんがあります。見て行ってもいいですか?」
 「あぁ。」


 葵音が頷くと、黒葉は嬉しそうにニコニコと品物を見始めた。
 やはりイルカの物が気になるようで、ぬいぐるみやイルカのチャームの付いたペンなどを見ている。
 けれど、何も買わないで戻ってきてしまった。


 「何も買わないのか?」
 「はい。見れただけでも嬉しいので……それに、お金を貯めてるのです。」
 「何が欲しい?プレゼントする。」
 「え……いいです!いつもよくしてもらってるのに……。」
 「いいから。イルカのぬいぐるみにするか。ほら、可愛いだろ。白イルカもいるぞ。どっちがいい?」
 「…………イルカのショーにいたのがいいです。」
 「よし、素直でよろしい。待ってろ。」


 葵音は、そのふわふわとしたイルカの人形を持ち会計に持っていく。
 これぐらいで、彼女が喜んでくれるのだ。安い買い物だろう。


 「お客様、カップルでのご来場ですよね?」
 「え………あぁ………。」


 突然会計のスタッフにそう言われて、葵音は言葉を濁してしまう。すると、スタッフはニッコリと笑い「キャンペーン中でしたので、こちらもプレゼント致しますね。」と、何かを袋に入れてくれた。

 よくわからないまま、それを受け取り黒葉の元に戻った。


 「はい。おまえのだ。」
 「………ありがとうございます、葵音さん!」


 葵音から袋を受けとると、黒葉はギュッとぬいぐるみの入った袋を抱き締めて、とても嬉しそうに笑っていた。
 彼女の好きな物が星以外でも見つかった事が、何よりの収穫だと葵音は思った。