「今日は暗すぎる。月があれば少しはここら辺も明るいんだほうけどな。」
「………月は嫌いです………光が眩しすぎるから。」
月があったら睨んでしまうのではないかというぐらいの強い言葉だった。
けれど、月の光がない夜空を悲しげに見つめる彼女の横顔は、また泣いてしまいそうに感じた。
葵音は黒葉の隣に寄り添うように座り、彼女が見ている夜空を共に見上げた。
「今度から、ここに来たいときは俺を起こせ。」
「え……でも……。」
「いいさ。こうやって夜の空気に触れて夜空を見つめているのもなかなかないし、いいデザインが浮かぶかもしれないからな。」
「………葵音さんは、忙しいんですから……しっかり寝てください。」
「おまえがいなくなると思ったら、安心して眠れない。」
「……ごめんなさい。」
黒葉は謝りながらも、どこか嬉しそうに微笑みながらそう言った。
「黒葉は、どうして星がそんなに好きなんだ?」
「………ずっと見せてくれるから。」
「え?」
その言葉の意味がわからずに聞き返すと、真剣だった表情がすぐにはにかみに変わり、「いつもキラキラしていて綺麗だからですよ。」と笑ったのだ。