黒葉が眠りについてから、季節が変わり窓から見える木々は、黄色や赤色に色づいていた。そして風が吹くとハラハラと落ちていき、地面を秋色にしていた。



 「やぁ、黒葉。今日は少し肌寒くなったよ。」
 

 仕事を終えて葵音が病室に入る。
 そこには、夏よりも少し髪が伸びた黒葉がいた。
 少しだけ穏やかな表情になったように感じているのは葵音ではなかったようで、看護師からも「なんだか、悪い意味じゃなくて……葵音さんと一緒にいるからか、幸せそうな顔ですね。」と言ってくれた。


 「今日はいいものを持ってきたんだ。………これを使うと部屋でプラネタリウムが出来るんだ。看護師さんの許可も取ったから、今日は夜までここにいるからな。一緒に星を見よう。」


 葵音は買ってきた、おもちゃのプラネタリウムをテーブルに置き、椅子に座った。

 そして、じっとベットに横になる黒葉を見つめた。
 事故から2ヶ月が経ったけれど、黒葉はまだ目を覚まさなかった。


 毎日のように黒葉の部屋に通い、星の本やグッツを買ってきたりして、話をかけていた。
 けれども、彼女から返事はなかった。
 独り言を繰り返し、愛しい彼女がただ目を瞑ったままという現実に、何度も挫けそうになった。
 会いに来るのが怖くなることだってあった。


 医者からは、「もう目覚めてもいい頃のはずだ。」と、言われ続けていた。
 その言葉を信じていたけれど、季節は変わりもう少しで冬になってしまう頃だ。
 

 けれど、少しだけ希望があった。