黒葉の家はとても立派な昔ながらのお屋敷だった。木製の立派な門には大きな鍵まで掛かっていた。祖母が家に案内してくれ、一歩門を潜ると、立派な庭園まであった。
屋敷では、黒葉の両親が迎えてくれた。
黒葉似の綺麗な女性と、威厳のある厳しい目をした男性が出迎えたのだ。
「初めまして。僕は月下葵音という者です。そして、黒葉さんとお付き合いさせていただいております。」
和式の部屋に案内され、大きなテーブルを隔てて黒葉の両親と向かい合って座る。隣には黒葉の祖母が少し心配そうな表情でその様子を見守っていた。
「なるほど。君が、黒葉が星詠みの力で見たという人物だという事か。それで、平星家に何かご用かな?………まさか、黒葉が星詠みで見たように事故にあったという話をしたいがために来たわけではないな?」
父親の強い口調で言われた言葉に、葵音は絶句してしまった。
この人達は、自分の娘がどうなってしまうのかを知っていたのだ。そして、それでいて黒葉がどうやっていようと平然としているのだ。
父親は怒りの表情で、母親は無関心な様子で話しを聞いていた。
星詠みの力がなくなってしまった娘は、どうでもいいのだろう。
彼女からもたらされる金銭は、黒葉自身が働いて返したのだ。黒葉に興味がないのだろう。
そんな両親を前にして、悲しみを通り越して怒りの感情が葵音の心を支配していた。
大きな声を出しそうになるのを必死に堪えた。
そして、簡単に黒葉と出会ってからの事を味覚く纏めて話し始めた。
その間も、黒葉の両親は興味がなさそうにしていた。