32話



 黒葉の故郷から帰る時には、大雨だったのが嘘のようにキラキラとした夕日が輝いていた。
 この天気だと、夜には綺麗な星空が見えるだろう。そう思ってしまうのは、黒葉の影響だなと葵音は思ってしまい、ひとりで口元を緩ませた。

 こうやって笑えるのは、少しずつ彼女への未来が見えてきたからだろう。
 黒葉の星詠みの力で、彼女の未来が事故で終わってしまわなかったことがわかり、葵音はとても安心していた。
 
 彼女が目覚めのがいつになるかわからない。
 けれど、きっと今日あった平星家の人たちとの出会いは、黒葉の幸せに繋がっているのだと思うと、葵音はその未来を想像してしまうのだ。
 彼女と手を繋ぎ、キラキラとした空の下を歩く未来を。



 「で、黒葉ちゃんのご両親にお会いして来て、どうだったの?」


 運転をしている葵音の横で、助手席に座る累がそう聞いてきた。行きは彼が運転したので、葵音が帰りは運転すると交代したのだ。
 大怪我をしたのだから、と言ってなかなか譲らなかった累だったが、「気分転換になるから。」と言って、葵音は無理を言って運転席に座ったのだった。


 「黒葉と暮らしてる事とか、付き合ってること、そして事故にあった事も話したよ。」






 黒葉の祖母に会った後、祖母にお願いして黒葉の両親のもとへ案内してもらったのだ。
 累は車で待っていてもらい、葵音だけで向かったのだ。

 少し前の事だが、それを思い出すだけで葵音は怒りが表に吹き出してしまいそうで、掴んでいるハンドルをギュッと握りしめながら、累にさきほどあった事を話し始めた。