葵音はどっと力が抜け、小さく息を吐いた。
事故から目を覚まし、彼女がいつ目の前から消えてしまうのか。そんな不安ばかりの日々から開放されたのだ。
葵音は思わず泣きそうになってしまった。
「大変だったのよ。私も星詠みの力で見たのはこのお店の今月のカレンダーだけだったから、ずっとこのお店に通っていたの。……でも、その甲斐があったわ。」
「あの………ひとついいですか?」
累はおずおずと小さな声でそう尋ねると、祖母は「ええ。どうぞ。」と、優しく返事をした。
緊張した態度のまはま累は祖母に質問を投げ掛けた。
「星詠みの力は1度だけ使えると言いましたよね。その……あなたはどうして何度も支えるのですか?」
累が質問したことは、葵音も疑問に思っていたことだった。
黒葉は1度だけの力のせいで、家族に疎まれてしまい、苦しんでいた。何度も見ることができたからお金のためにまた力を使えるのだ。
彼女がそうするとは思えなかったけれど。
「………私は特別よ。1年に1回ぐらいは使えるの。けれど、星詠みの力はとても精神力を使うから、こんな老いぼれた体では使えないんですけどね。可愛い孫のために、頑張ってみたわ。」
「そのお陰で1ヶ月入院したけれどね。」と、苦笑しながらも星詠みの力でこうやって葵音に出会えたことが嬉しかったのか、黒葉の祖母は満足そうな顔を見せていた。
「………お話を聞かせてくれてありがとうございます。それに、俺たちを待っていてくれて感謝します。」
「いいのよ。黒葉の大切な人に会えて私も嬉しかったしね。………それで、私の話を聞いて………葵音さん。あなたは、これからどうするつもりなの?」
黒葉の祖母の問いに、葵音は少し考えたあとに、まっすぐな視線を彼女に向けた。
「黒葉さんの両親に会わせていただけませんか?」