遠くにいる黒葉を考えているのだろうか?祖母は、窓の外のどんよりとした空を見つめながら話続けた。
「きっと顔をみれないあなただけが、あの子の希望だったんでしょうね。運命の人に早く会いたい。大切な人であろう、あなたを守りたいって。」
「………でも、もしかしたら旅先でただあの交差点ですれ違って事故に合うだけかもしれなかった。それだけでも運命なんでしょうか?」
「………黒葉は自分で動いて運命の人を引き寄せたの。今、そうなってしまったけれど、その通りになったでしょう?………あの子は、しっかりと葵音さんを見つけて恋をして、恋人になって、そして守ったの。………怖かったでしょうが、あなたを守れて幸せだったはず。」
「……けれど!黒葉は、大ケガをしてしまった……俺が守ってあげれれば良かったんだ。それなのに………。」
黒葉の祖母は、切ない微笑みを浮かべながら、葵音を見てゆっくりと首を横に振った。
「……本当ならば、あの子の力はお金持ちの誰かに使われるものだった。私の子どもたちや、母親やもっと昔の親族もそうだった。お金が入るのはいいこと。だけれど、大切な人が出来てから思うのです。……この人を守ってあげたかったって。事故や病気、不幸なこと………守れる術を持っていたのにお金に変えてしまう。それが、どれだけ悔しいことなのか。…………頭が良かった幼い黒葉は、先を読む事が出来たのでしょうね。それを選ばなかった。……私はそれでよかったと思っています。」
「それでも、家族から疎まれてお金を返していたんですよね。」
「……私は黒葉の両親に説得したんですけどね……だめだったわ。だから、少しでもあの子のそばにいようとしていたの。だから、黒葉もなついてくれてね。いろいろ話してくれていたのよ。」
だからなのだろう。
祖母の仕草や話し方、そして笑い方までも彼女に似ているのは。
黒葉は祖母が大好きだったんだろうと、想像出来た。
「だからこそ、思うのよ。……黒葉はあなたを守れて幸せなはずよ。だから、目覚めたときに、また傍にいて笑ってあげてね。……怒ってはダメよ。きっとあの子は、無事だったあたなをみて嬉しくて泣いてしまうはずだから。」
「…………そう、ですね。」
黒葉が目覚めた時の話。
それは、夢のようで………他の人から言われると、それが叶いそうな気がしてなからなかった。
葵音は、早く病院に戻って黒葉に会いたくなる。
けれども、今はやることがあるのだ。
祖母から星詠みの話を聞く事。
そして…………。