「それに、自分の娘が怪我をしたというの家族が知らないというのも、おかしな事だと思うしな。」
「……それが普通の家庭ならね……。平星家がどうかはわからないよ。」
「そう、だな………。」
家族だからと言って、必ずしも心配するわけでもないのは、葵音もわかっている。
実際、黒葉は家族から逃げるように葵音の元へとやってきたのだ。そして、星詠みの力がなくなったら、娘からお金を取っていたという環境だ。
お見舞いにも来ないのか。それとも、本当は心配をしているのか。後者だといいなと、葵音は思った。
「星詠みの力は僕も気になる事だし、一緒に行くよ。」
「ありがとう。心強いよ。」
「………けど、葵音はどうするんだい?まだだから、退院するめどなんて立っていないだろう?」
「………抜け出すさ。1日ぐらいならそんなに怒られないだろう?」
「怒られると思うけどね。」
累は困った顔をしたけれど、葵音を止めることはしなかった。きっと無駄だとわかっているのだろう。
葵音は日記を読んで、ふと考えた事があった。
それは、黒葉と葵音は、星詠みの力な働いて出会い、恋をしたものなのかという事だった。
星詠みの力で事故の事を知ったから黒葉は動き、葵音を見つけ出してくれた。
それは、星詠みがなかったら恋愛などしなかったのかもしれない。
星に決められた出会いだったのだろうか?
そんな事を考えたけれど、葵音はそれはそれでよかったと思った。
星詠みの力だろうと、黒葉と出会えて恋人になれた。
それだけでよかったのだ。
彼女を好きになれるならば、どんなきっかけでも構わない。むしろ、星詠みに感謝しなきゃいけないのかもしれない。
事故で黒葉を傷つけた力だと思うと複雑だったが………。
あぁ、黒葉に会いたいな。
日記の内容を思い出すとそんな風にあらためて思ってしまう。
病院を抜け出す前に、彼女を一目見てから出掛けよう。そんな風に葵音は考えていた。