星詠みの力を使ってしまった私は、家の者達から意味嫌われました。
 入るはずだったお金を返すことになり、高校のときからバイトをして、社会人になってからもほとんどを平星家に入れ、夜もこっそり仕事をして、やっとほとんどを払い終わりました。

 あと少しと言うところで、よく星詠みの力なのか、事故の映像を見る事が多くなったのです。
 だから、家の人に「必ずお金は支払う。」と、書いて家を出てきました。
 きっと事故が近いのだろう………そう思ったのです。』




 そこまで読んでから、葵音は少しだけ手紙から視線を逸らして、呆然とした。

 星詠み人。
 未来を詠む力。
 未来を売って生きていくことを強いられた黒葉。


 今まで知るはずもなかった言葉や能力を知り、葵音の頭はパンクしそうになっていた。

 少し頭の中を整理してから、考える。

 それで思ったのは、黒葉の過去の重さだった。


 生まれてから星詠みの力があるばかりに、未来を見てお金を貰うことの躊躇いがあったのだろうと葵音にもわかった。

 お金払えば危険な過去を回避できる。
 それが良いことなのだろうかと考えると、微妙な気持ちになってしまう。

 せっかくの力を自分の大切な人に使おうと思うのは当たり前のように思った。

 そして、使わないという、選択もできたはずだ。それなのに、強制的に星詠みの力を使わせようとした平星家に葵音は不信感を覚えてしまった。

 それに、勝手に星詠みを見たからといって、代わりに代償を支払わせるというのもおかしな話だった。


 ざわついた気持ちを落ち着かせるために、葵音は一度大きく息を吐いてから、手紙を読む事を再開した。