これが優しさじゃない事なんてずっと前から知っている。
結局波村先生もわたしで遊んで、楽しんでいるだけ。
先生なんて、そんなもの。
もしかしたら生徒よりも残酷かもしれない。
でも波村先生は気付いていないと思う。
実はエリ達に遊ばれているってことを。
ナミちゃんなんてニックネームで呼ばれて光栄だとでも勘違いしているのか、いつも波村先生は笑っている。
推薦を狙っているエリは先生を味方につけておくことで自分に有利な進学になるようにしているだけ。
他にも、普通以下、つまり並以下、という意味で「ナミちゃん」と呼ばれている。
「授業始めるわよ、教科書開いて」
「はーい」
エリの返事で何事も無かったかのような空気が作り出され、エリにとっての「日常」が教室に戻ってくる。
私だけを残して。
「じゃあ山本さん、教科書読んで」