「……あーでも握手はした」
あまりに驚きすぎて筆箱を落としてしまった。
……動揺してるのばればれじゃん……。
「これ、こっち来た」
「あ、ありがと!」
恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがない。
教室を飛び出しながら声を聞く。
「ナツ大丈夫なの?」
「野木さん絶対何も経験ないよ」
「手繋いだってことだけであれだけ動揺してんだろ?」
ほら、だからわたしは戸部くんに釣り合わないんだよ。
走って走って初めて屋上のドアの前に来る。
誰も疑うことなく、このドアに触れた人はないない。
わたしも例に漏れずその1人だ。
恐る恐るドアノブを回すと、開いた。
「……う、わあ……」
広い空が広がっていた。
どこよりも広い空だ。
雲一つない晴天のおかげでより広く見える。
「いた」
「……どうしたの」