「おはよ、コハル」



「おはよ、ワカナ」



「課題やった?あたしなんか夜中までかかったよー」



昨日までのわたしなら、気付かないままだった。



ワカナがずっとわたしと話す時に必ず目を合わせようとしていたことに。



「……どうしたの?じっと見て。

なんか付いてる?」



「……ううん、何でもない。

前髪切った?」



「それ何日か前だよー」



笑いあってからそれぞれの勉強に戻る。



「おはよ、野木さん」



「……おはよう」



昨日の今日でよく普通に挨拶が出来ると思う。



わたしなんか目すら合わせられない。



かろうじてテキストに目線を落とすことで平常心を保っているのに。



「あれ、なんか野木さんの態度が丸くなってる!」



「昨日あのあとあったんだろ?」



「何もねえよ、うるせえ」



よかった。言われてしまったら恥ずかしくて授業に出られない。