「わたし以外にもいるんじゃない?
そういう人」
「だから、俺が何とかして助けたい」
「……え?」
だめだ。これ以上、心の中に入ってこられたら、わたしは。
きっとまた人のことを恋しく思ってしまう。
「野木さんを、笑顔にしたい」
別れる時が辛いのに、なんで出会いを求めるんだろう。
「好きなんだ、野木さんのこと」
「……でもわたし、戸部くんのことをよく知らない」
「俺は入学式で見た時から好きだった。
桜を見る、澄んだ目が好きになった。
きっとこの人は世界が大好きなんだなって思った」
「……世界は、好き。
でも、人は怖い」
誰にも話すつもりなんてなかったのに。
「……いつ、いなくなるか、分からないからっ……!
それなのに、人を好きになれる自信なんてない。
いつか怖くなって自分から手放してしまうと思う」
「それを俺が何とかしたい。
野木さんを、人のことを大切にできる勇気のある人間にしたい」