何のことだかさっぱり分からないけれど、とにかく心臓に悪い。
まだ心臓がバクバク言っている。
寿命が縮んでしまいそうだ。
何とか靴を履き替えて外に出るとまた驚かされる。
「野木さん、人に慣れてないよね」
「……そんなわけ、」
「じゃあ触れる?俺のこと」
「だ、大丈夫だけど?」
見せつけてやろう、そんなわけないっていうことを。
あと少し、というところで触れなかった。
体温は感じていたのに。
「やっぱり。隠している方が辛いと思うけど?」
「隠してなんか、」
「じゃあ移動教室の時も、朝礼の時も、人の波が引いた後に動き出すのは?」
「……見ていたの?」
「ストーカーするつもりはないけど、気になっていたから。
特に、同じクラスになってから確信した。
友達にも、指一本触れさせない徹底ぶりなんて女子にしては意外だったし。」