「ねえ、教科書見せて。今日忘れたんだよ」
「あれ何ていうの?俺当たるんだよ」
「筆箱忘れたからシャーペンと消しゴム貸してくれない?」
だから嫌なんだ。
目立つ人たちは自分に自信を持っているから誰にでも屈託なく話しかけられるんだ。
そして、何よりむかつくのが自分の頼みなら絶対に誰も断らないと無邪気に確信しているところ。
しかもこいつはわたしが絶対に言い逃れできないようなものばかり要求してくる。
昼ごはんなら断れるのに。
「元気ないじゃん。勉強やりすぎた?」
ワカナがわたしの顔をのぞき込む。
「分かってるくせに」
「ばれたか。でもね、戸部くんがあんなに話しかける女子ってコハルだけだよ?
他の女子、嫉妬しそう」
あんな奴のせいでわたしの学校生活が台無しにされたらたまったもんじゃない。
「まじで、迷惑」
「コハルらしい」